忍者ブログ

VLINDER

日々つらつらと描いたり書いたり。






逃げて欲しかった【勝デク短文】

勝デク短文。
続きから。



PR

【ヒロアカ/勝デク文】 強者 と 弱者


今週の勝デクのそれぞれ抱えている感情が衝撃的過ぎたので
自分なりに整理してみた
今週のジャンプネタばれなので注意です。

つづきからどうぞ







ワールドトリガー迅修ネタ わがまま

修達の遠征行きが決まったという設定で思いついたネタ。
メモってるだけです。

つづきから。

残酷な別れの世界の中で(蔵馬+幽助)

唐突な幽白SS
魔と人の間で生きる二人の話

本分はつづきから。


A selection of b-rabbit【ギルオズアリ】

ギルオズのようなオズアリのような。
チェインであるオズは、結局どうなるんだろう


つづきからどうぞ

世界で一番の調味料【南北伊】

可愛い可愛い、俺の弟

「ほらよ」

今まさに出来上がったばかりのパスタをお腹を空かしてヴェーヴェー唸っていた弟へと差し出した。泣きはらした顔が一転情けないようなバカっぽい笑みに変わると、飛びつくようにパスタへと手を伸ばす。

「おいしー」
「あったりまえだばか」

片手に持っていたもう一つの皿をテーブルに載せてから、ゆっくりと椅子へと腰掛ける。ふわりと女のような笑みを浮かべている、おんなじ顔のはずなのにこうも違う弟の顔を見ながら、自作のパスタを口へと運べばいつも通りの美味しいトマトソースのパスタが口いっぱいに広がった。

「俺ね、兄ちゃんのパスタ大好きなんだよ」

う、と予想しない言葉に思わずのどを詰まらせかけた。酸素を取り損ねた肺が呼吸をしようとしているように俺はごほごほと荒い咳をする。
そんな俺の様子にフェリシアーノは心配そうに俺を見た。

「だ、大丈夫兄ちゃん?どうしたの?」

お前が原因だ、とは口が裂けても言えるはずがない。なんだか俺一人が感情あらわにしているのは悔しくて、仕返しにお得意の頭突きをくらわせてやった。ゴン、という鈍い音とともに頭に激痛が走ったが、フェリシアーノは俺の痛みの何倍ものダメージを食らったに違いない。その証拠にフェリシアーノは、痛いやら何やら叫びながら涙目で俺を睨みつけてきた。全く怖くないのだが。

「黙ってろ馬鹿弟が」
「うう、なんだよー」

意味がわからないといった顔で見てくるフェリシアーノを気にせずに俺は再びパスタに手をつける。

あいつが美味しいとほめてくれたパスタ。
それがなんだかさっきよりも美味しい味がした気がしたのは
きっと、気のせいだろう。

(それは世界で一番の調味料)

白と紅の終わり【沖+銀】


たたずむその銀髪の男に、俺はただ、見つめる事しかできなかった。

「そう、あれは、ただ美しかった」

真撰組屯所。
そこで、その言葉を口にしたのは、何もこの男だけではない。
攘夷浪士を捕えるという立場上、様々な場所で彼らを斬っては、時には尋問もする。そんな時、彼らの中には、その伝説ともいえる男達の話をするものが、少なからずいたのだった。
圧倒的な強さと指導力で攘夷志士をまとめ、率いた桂と高杉。
そして、彼らと並んで、しかし別次元の、ある一種の信仰のような形で、その男、白夜叉は語り継がれていた。
戦場を駆けるように跳ねる刃を染める真っ赤な血と、相反するその白き姿。
ただ、その世界を映す瞳だけが紅に染まり、血と鉄の混じり合う汚れた世界の中で、彼は美しく、そこに在る。それが、誰もが語る白夜叉の伝説だった。

「白夜叉ねェ・・・」

尋問を終え、沖田総悟は幾度となく聞いたその言葉を口にする。

「ほんとに、あの白夜叉が旦那なんですかねェ。ちっとも想像つかねぇや」
「そうだな」

煙草に火をつけつつ、土方は返事をした。外はまだ昼すぎ頃だというのに暗く、雨雲が空を淀めいている。おそらく、しばらくすれば雨が降るだろう。

「理解しがたいのは、誰もかれもがその白夜叉を表すのに、”美しい”なんて使いやがることだ」

あの駄目人間のどこに、美しさのかけらがあるというのか。今の彼を知るものからすれば、それは全く想像もできないことだった。真選組の隊員たちは、銀時が戦っている場面をいくつも見てきた。たしかに、やつは強い。それこそ鬼の、夜叉のように。しかし、そこに美しさなど、見出すものはいないだろう。彼はまるで、地を這いつくばる虫けらのように、泥にまみれながらも、けして諦めることないその意思を、貫く戦い方をする。

「まあ、記憶は美化されるものですからねェ」

戦場などという精神が限界まで追いつめられる場所で、鬼のように強い男が周りとは違う姿形をしていた事で、美しいなどという錯覚を起こしたに違いない。
そう思ったところで、沖田はふと時計を見る。
そこで、2時に人を訪ねる用事がある事を思い出した。

「おおっといけね、ちょっと行ってきやすぜ」
「傘持ってけよ、雨が降りそうだ」
「へーい」

土方の言うとおり、ぽつり、ぽつり。雨の香りが、辺りを漂い始めていた。

────────────

雨粒が強く沖田の傘を叩く。
予想通り、雨が降りだしたときにはもう、用事は済み、屯所へと帰る時刻になっていた。

「おっなんだ、沖田君じゃないの」

うるさい雨音にかき消されそうになりながら、その声が、後ろから沖田の耳に届いた。
くるりと後ろを振り返れば、この雨の中傘もささず、立つ銀時がいた。

「何してんでェ、旦那。ずぶぬれじゃねーですか」
「だろ?そう思うなら傘入れてくれ」
「お断りしまさァ」
「そういう奴だよねお前は!」

おそらく、初めから期待していなかったのような口ぶりである。
俺たちは、いつのまに、性格を把握できるほどに、彼らと親しくなっていたのだろう。
近藤さんはその恋心からくる犯罪行為(つまりはストーカー行為)によって、多分もっと彼らと接している。俺達隊員よりも、もっと彼らと親しくなっているはずだ。それが良い意味か悪い意味かに関わらず。
この腐れ縁は、もう切っても切れない。
貶しあいながらも、毒づきあいながらも、けして、断ち切れることは無いのだろう。

「くっそ、結乃アナの天気予報では晴れだったんだけどなあ」

ざあざあとうるさい雨の音。
もしも、これが全て、血の雨だったのなら。
白い衣が、血に濡れて、だんだんと真っ赤に染まる。
夜叉が、生まれる。

「こんな天気の悪い日にまで、天気予報信じるなんて馬鹿ですねェ」
「るせえ!俺は結乃アナの天気予報しか信じねえことにしてんだよ」

ぎらりと睨む赤い瞳。
殺意は籠ってないけれど、白い彼に、その瞳は酷く不釣り合いだと感じた。
だからこそ、目がそらせない。

ぽたり、と、雫が自分の髪を流れ落ちる。

「え、なに沖田君、どうしたの」

持っていた傘を、彼の頭上に掲げた。勿論、俺も濡れた。

「俺が、その予報を叶えてさしあげますぜ」

そのひとり分の広さしかない傘では、二人をこの雨から守るのは無理だ。
だから、傘をさしていても、二人とも、半分ずつその体を雨にさらしている。

「なになに、大丈夫?頭が。自分濡れちゃってんじゃん」
「ひでえなぁ、旦那」

美しいと、言葉を漏らした攘夷浪士達を、羨ましく思う。
ただただその刃で切り裂いて、前へ進むことだけで脳内を満たす、この男の姿。
彼とは違って、俺はこの人の事は良くわかりはしない。
でもそれはきっと、もう二度と見る事の出来ないものなのだ。
汚く、ずる賢く、泥にまみれて生きる事を選んだ彼よりも、昔の、ほんの一時。
その時にだけ存在していた、彼の中の夜叉。

いつか、彼と刃をまみえることが出来たのなら。
俺は、それを呼び起こすことが出来るだろうか。


「とても楽しみな事ができたもんで、気分がいいんでさァ」


優しさも
心も
誇りも
約束も捨て去った
その美しい白夜叉を、俺は、この目で見ることが出来るだろうか。

俺も一度でいい、この白い男が、真っ赤な夜叉へと染まる姿を、見てみたい。

たとえそれが
この体が地に伏せる時
最後に見るものになったとしても。


end.
130307



妄想文置き場

僕のヒーローアカデミア
 強者と弱者【勝デク】


ワールドトリガー
 わがまま【迅修ネタ】


PandoraHearts
 微睡の君【ギルオズ】
 A selection of b-rabbit【ギルオズアリ】


APH
 世界で一番の調味料【南北伊】
 繋いで絡めて離して【英日】
 脳内でだけ語られよ【英日】
 TEA TIME WITH YOU【仏英】
 美しい、最後を上げよう【伊ボスマフィアパロ】
 邪魔者【独伊+仏】


デュラララ!!
 たったひとりへ贈る【静臨前提臨+波】
 お不幸自慢【静臨】
 ×に似てるね【静臨】
 両腕の笑顔【折原家】


その他版権
 約束の結末【NO.6:ネズ紫】
 再び巡り合うと信じて【リボーン:10年後雲ツナ】
 白と紅の終わり【銀魂:沖+銀】
 残酷な別れの世界の中で【幽遊白書:蔵馬+幽助】

微睡の君【ギルオズ】

このまま、時が止まればいい。

かちりかちりと、規則正しく時計の音が時間を刻んでいる。それは俺にとって、いや、きっと誰にとっても、確実な死へのカウントダウンにすぎない。俺の場合、それが遠い将来のことではなく、抗う術もほとんど絶望的である、というだけで。

朝日差し込む部屋の中、ぼんやりと眠気の残る頭の片隅で、そんな事を考えながら、オズは体をゆっくりと起こした。まだ、時計は鳴っていない。いつもより少しだけ早く目覚めてしまったようだ。何故だろうか。特に昨晩早く寝たとか、そんなことは無かったはずなのに。しかし、深く考えるのはやめた。そういう日もあるのだと、理由もなく納得するしかない。世の中は、そういうことばかりだ。理不尽と言ってしまえばそれまでで、そんなものにいちいち落胆したりするのは馬鹿らしい。何も考えたくはなかった。目覚めて最初に感じたあの思いが、胸に込み上げてくるから。考えてはいけない。今まで目をそらし続けてきたものに、急に直面してしまったこの感覚は、けして簡単に拭いされるものではなかっ
た。

そのとき、不意に扉を叩く音が聞こえた。

「オズ、起きてるか?」

ギルバートが、少し声を落として尋ねてきた。間が悪いと思いつつも、起きてるよ、と声を出そうとした。だが、やはり、そんな気分ではなかった。自分が今どんな表情をしているのか分からなかったし、得意のポーカーフェイスも、上手く作れる自信がなかった。きっとまだ完全に目を覚ましていないからだと、思う。いつもより少し早く起きたことで、自分の中のペースが少し乱れているのだ。幸いにもまだ時計が鳴るまで30分も時間がある。ならば、寝た振りをしても何も問題はなかった。けれど、ギルバートが何故こんな時間に自分の部屋へ来たのか、その理由はなんだろうか。少し気になったけれど、少しの時間なら、別に対して問題もないだろう。ギルも多分、たまたま部屋の近くを通ったから、俺の
起床を確認しただけだ。
そうでなかったとしても、俺には時間がないのだけれど、それでも、少しくらいなら。せめて自分を落ち着かせる時間くらいは、くれないと困る。心の奥に閉じ込めた、様々な思い。孤独、寂しさ、不安、恐怖、悲しみ。今にも溢れだしそうなそれらを、またこの小さな箱の中へと閉じ込めるのだ。

ガチャリ、とドアノブが回る。
あわててオズは、その身を再びベットの中へ沈めた。まさか、入ってくるとは思わなかった。そこまで、急な用事なのだろうか。

「寝てるのか・・・まあ、そうだよな・・・」

足音が近づいてくる。特に急いだ様子もない。まだだめだと、オズはシーツを握りしめながら思った。まだ、笑えない。恐怖が去って行ってくれない。父の言葉が、自分の終わりが、頭を掠めていた。
お願いだから、今は、そばに寄らないでほしい。誰にも頼る事が出来ない俺は、例えお前であっても、自分の弱さを容易には曝け出せない。それもまた、恐怖だったから。

「オズ」

また、ギルバートはオズの名前を呼んだ。しかしそれは、オズを起こすためのものではない。ギルバートは、そのままオズを起こさぬようにと、静かにベットの脇に腰を下ろし、そしてただ、ベットに顔を埋めたままのオズの髪に、そっと触れた。
用があった訳じゃないのかな・・・と、オズは少し安堵した。同時に、何しに来たのかと、またもや疑問が浮かぶ。
でも、そんなことは、どうでもよかった。ベットに寝て髪を触られていると、またもや眠気が誘われる。それは、オズの思考を奪った。
起きても、起きなくても、どちらでもいい。

「ねえ・・・ギル、何してんの」

ぼんやりとした思考の中で、そんな言葉が零れた。恐怖は今、すっかりと仕舞い込んだ。もしくは、片隅に置いてきたのかもしれない。

「おまっ、え、起きて・・・!」
「まあいいけど、さ」

顔をあげて、見上げれば、少し顔を赤く染めてあわてる従者がひとり。
その様子を見て、なんとなく可笑しくて、オズはふわりと笑う。
そして行き場を失くしたギルの腕をつかみ取ると、強引に自分の頭に載せた。

「なにして、」
「止めていいなんて、言ってないけど」

にっこり微笑んで彼を見れば、もちろん、逆らうはずはない。

「もうすこしだけ!」

お前の手は、冷たいけど温かくて、安心する。
恐怖もなにも、忘れてしまう。それは、お前が俺を想ってくれているから。

「はあ・・・ったく」
「なんだよー」

考えなくてはいけない。目をそらしてはいけない。
終わりは確実に、近づいている。
けれど、今だけはこのまま。
愛しい者と、愛しい時間を。




end.
130228

再び巡り合うと信じて【REBORN:10年後雲ツナ】

10年後あたりに書いたもの


「ずっとこのままなら良いですね」




唐突に呟いた、限りなく無意味な希望論。

長い月日をかけてすっかり青年と呼べるほどの風格を持つようになった彼も、まだボスと言うには程遠く、しかもイタリア一のボンゴレとなればそれは尚更で。
それでも彼なりに積み重ねた十年の豊富過ぎる経験と知識は、確かに彼を驚くほど成長させていたのだろう。
机に散らかる書類を手に取り、てきぱきと仕事をこなす彼にはいまやダメツナの欠片さえ見当たらない。

「君がいう言葉じゃないね」

聞き流せばよいのだけれど。
何時ものように紡がれる口癖に、何故か今日は意地悪く口を出してしまった。
といってもその言葉が出たのは無意識で、僕が君にいつも言いたくて、だけどあえて言わなかった、言う必要も無かった言葉だった。
驚くほどの早さで彼は仕事を片付ける。
溢れる程の書類がかさばっていた机は既にいくらか片付き、残り数枚という紙束を整えながら綱吉は僕の言葉に耳を傾ける。

「...どういう意味ですか?」
「ボスが不変を求めるべきじゃない、て事だよ」

皮肉。
こんなもの、僕の勝手な自己満足でしかないと解っていたけれど、僕らにはそんな理想を語る時間さえ、残されていない。
傷ついたような顔をしたかと思えば、綱吉は手に持っていたコーヒーをじっと見つめた。
そして再び書類へ手を掛ける。
そんな動作を繰り返しながら、ひとつひとつの呟きを溜め息を吐くように僕へ漏らしていく。

「なら、辞めちゃいましょうか」

ね?、と悪戯に笑いながら首を傾け雲雀に同意を求めた。
心ないその笑いに頷くことも否定することも出来はしない。
何も言えない僕自身をたまらなく噛み殺したくなった衝動を感じながらただひたすら彼を見つめた。
...そんな事などさほど気にしていないように、君はふいっと視線を反らす。
そんな彼に妙な苛立ちを感じた僕は、やはり変わらず悪態をついた。

「やめてくれない?冗談は嫌いだよ。」
「そうでしたっけ」

「僕はそういうの、嫌いなんだ。」


あえていうなら

神なんて不確かなモノに醜くすがり付く、弱くてどうしようもない存在とかも嫌い。
力無い故に、ほとんど無いその力をかき集めて彼ら草食動物は自分達を強く見せようとする。
自らが烏合の衆のひとつだという事を知っているはずなのに。
人は力を驕り過信して、堕ちる弱い生き物だ。
儚く弱く、生きていく奴ら。
けどそれは彼らが弱い故の生き方だから、僕はそれを哀れだとは思っても愚かだとは思わない。

むしろ僕は、力が有るくせに美を尊ぶように火へと飛び込む虫達みたいに、偽善者ぶるやつらな方がより醜いと思う。
醜い醜い自己満足の自己犠牲。
...此方の方が比較できないくらいたちが悪い。

「君みたいなのもね」

そういうのが一番、嫌い。

「俺は雲雀さん好きですよ」
「僕は嫌い」
「だーい好きです」
「大嫌い」

だんだん苛立ちが増してきたのか、声が荒くなっていく。
子供が言い争うみたいに永遠に終わりの無い返答をどちらもひたすら繰り返していたが

不意に綱吉がそれを止めた。


「もー、やめ!こんなの止めましょう!」
「君が悪い」
「じゃあ謝りますごめんなさい」

「謝れば済むなんて思ってるの?馬鹿じゃない、」


「だって...最後かも、しれないし」

「...っ」


ミルフィオーレへの招待。
期日は明日。死を、争いを覚悟した旅路。
哀しみと不安をひた隠しにした笑みを僕に向けたまま、君は淡々と言葉を紡ぐ。

「俺はこういう生き方に後悔してないです。誰より大切な人達を自分の手で護る事が出来るから。」
「そのせいで死ぬかもしれないのに?」

僕には理解できない。
後悔は無いの、と間髪入れずに問うたその問いに、君は一度唇を噛んだかと思えば口をつぐむ。
しかし覚悟を決めた琥珀の瞳を携えて


「勿論」


と、凛とした態度で笑った。


それは覚悟
僕にさえ止められないほどの


自己犠牲という醜い死を前にしているというのに、何故、彼はそんなにに美しいのだろう。

「あ、だけど」
「...」

「雲雀さんが仕事ばっかで相手してくれない時はちょっと後悔しましたよ?」


中途半端に散らしていた書類を再び整え、ひとつに固めた。
よしっと納得したように書類を手でポンッと叩きながら、彼はそんな事をさらりといってのける。
僕は目を見開いてそんな彼をを凝視し、自分を罵るように嘲笑った。

「ば...っかじゃないの」
「俺にとっては大事な事ですー」

瞳から零れそうなモノを必死に留めて彼を見る。
この瞳に、脳に、細胞のひとつひとつまでに焼き付けて、君を忘れないように。

「えっ...」

細い腕を強く引っ張れば、か弱い体がすっぽりと僕の胸板に収まった。
抱き締めたら壊れてしまいそうで、それでもこの想いを伝えるように手に力を込める。
強いのに優しすぎるこの青年に、再び巡り合う事は無いのかもしれない。

それでも


「...帰ってこないと噛み殺す」
「えーやだなぁ」

「帰ってきても噛み殺す」

「...矛盾じゃないですか」

「それでも噛み殺す」
「......ふふ、楽しみです」

「ずっと待ってるから、愛してるから、

此処に帰ってきて」





無意味な希望論は好きじゃない
愚かな自己犠牲も好きじゃない
けれど


無意味でも
愚かでも

愛しい人をただ信じていたくて







「いってきます、雲雀さん」


再び巡り合うと信じて






「いってらっしゃい」








僕はその手を離す


END
090304

約束の結末【NO.6:ネズ紫】

駄目だ僕は君がいなくちゃ。暗闇に落ちる視界の中で、鮮やかな赤がやけに輝いている。理想の世界。君は僕に、それを造り上げる機会を与えてくれたのに。やはり人間は醜いもので、NO.6の創られたあの日のように、理想は歪んだ欲望に彩られていく。僕はそうではなかった。だから今こうして地に伏しているのだ。僕は知っている。何よりもつらいあの場所を生み出したNO.6の過ちを。そして僕はそんな欲望さえ色褪せるような、もっと美しいものを持っている。だから僕は止めようとした。世界の歪みをもとに正そうとした。けれど歪んでいく世界の中で僕だけが正常で、それはつまり、世界にとっての異端者は今や僕の方であった。

(…もしここで僕が死ぬのなら)

最後に見たいのはやはり君で。でももう叶いそうにないほどに血は溢れていた。病院に行けば助かるかもしれないが、今周りにいるのが僕のこの状況を作り出した人達なのだから、そんな甘い希望はさっさと捨てるべきなのだ。

(やはり、彼についていけばよかったかなあ)

彼はあの別れた日からまだ一度も会いにはこなかった。それでも彼を思い出さない日は一度もない。
きっと彼もそうだろう。自惚れではなく。会いたい。今までしてきた事を無駄だとは思わない。残ったことに後悔なんてない。それでもそんなことを思ってしまうくらいには危機的な状況だった。

(会いたいなあ)

何も考えられなかった。僕が死んだらこの町が、母が、イヌカシが、シオンが、どうなるかなんて。ただひとつだけ、君の事しか浮かばない。

(ネズミ。)

涙がこぼれた。その時、どこからか鼠の鳴き声が微かに聞こえた気がした。

(ああもう…幻聴が聞こえるくらいやばいのか…)

意識が薄れる。その視界が閉じられる瞬間、体がふわりと宙に浮くような感触がした。人々の叫び声が聞こえる。なにかあったんだろうか。

「紫苑」

懐かしい声がした。
けれど重い瞼のせいで、僕は眠りに落ちてしまい、その声の主を知るのは、また少しあとの事になったのだった。


111228.
二人がそれぞれの道を歩いている、いつかの日
        
  • 1
  • 2